【4,5歳児おすすめ絵本】あのね【ねらい・読み聞かせのポイント教えます】
「あのね」は私が”嘘をついた時の自分と重ねて共感してほしい””嘘の良し悪しを自分なりに考えて欲しい”というねらい・想いを持って読むことが多い一冊です。
保育士歴10年以上のRyuが日本一詳しいレビューをお届けします。
作品紹介
「あのね」はこんな絵本!
「あのね」ってどんな内容の絵本?
そんな疑問にお答えするために「あのね」を簡単にまとめてみました。
- 嘘をついた時の心情が丁寧に描かれた作品。
- 登場キャラクターと自分の体験を重ねる事ができる。
- 嘘の良し悪しの判断を考えるきっかけになる。
まるわかりQ&A
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あらすじ・ストーリー・内容
嘘をついた時のモヤモヤを子どもに寄り添いながら描かれています。
森を歩いていた茶色いねずみのチッチ。赤いかっこいい車が落ちているのを見つけて誰のか分からなかったけど「ちょっとだけ借りちゃおう」と言って、持ち帰ってしまいます。
誰のか分かるまで預かっていよう、外だと汚れちゃうし、壊れちゃうかもしれないから…と自分の言い聞かせます。
チッチが森へ行くと友だちのトービーが何かを探しています。トービーは「赤い車知らない?」とチッチに聞きますが、チッチは思わず「知らない」と答えてしまいました。
家に帰ったチッチは嘘をついてしまった事を後悔し、明日返そうと言い聞かせますが、トービーと遊んでいても中々言い出す事ができませんでした。
そしてある日、胸のあたりがチクチクする事に気付きます。刺がささったみたいとトービーに言って家に帰ると、心配したトービーが刺抜きを持ってきてくれたのです。
堪らずチッチは「ごめんね」と言って嘘をついていた事を謝り、トービーに赤い車を返すことができました。
そして実はその赤い車はトービーのお兄ちゃんの車でトービーもなくしてしまった事をお兄ちゃんに言えず、聞かれても「知らない」と嘘をついていたのです。
トービーもお兄ちゃんと話す時はいつもドキドキしていた事をチッチに打ち明けます。チッチと一緒に赤い車を返すと二匹はチクチクもドキドキもしない晴れやかな気持ちで遊ぶことができました。
嘘をついてしまった時の気持ちを代弁してくれている絵本です。
こんな方におすすめ
- 嘘の良し悪しについて考えられる絵本を探している
- 絵本の内容と自身の体験を重ね合わせ、自己投影できる絵本を探している
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愛される喜び、安心感が得られる「どろんこハリー」
白い犬のハリーはお風呂が大嫌い。ある日、体を洗うブラシを隠して、家の外へ抜け出します。工事現場や橋の上、鬼ごっこをしていると汚れて黒犬に。家に帰り、お家の人に体を洗ってもらい、最後はお気に入りの場所でぐっすりお昼寝出来て幸せなハリーでした。
子どもの気持ちに寄り添っている一冊です。
自分を絵本に投影し共感できる「はじめてのおつかい」
230万部を超える名作。えりちゃんがおつかいを頼まれて、様々な困難を乗り越えていくお話。自己有能感、不安、葛藤など子どもが共感できる描写が盛りだくさんの絵本です。
グッと世界に引き込まれる一冊です。
目的・ねらい
- 嘘をつくことに対して自分なりの考えを持つ
- キャラクターと自身を重ねて気持ちに共感する
目的・ねらい1
嘘について考えるきっかけになります。
「あのね」のメインテーマは“嘘”です。嘘をつくとどう言う気持ちになるのかがストーリーを通して丁寧に描かれています。
幼児期の子であれば何となく嘘は良くないことであると認識している事が多いのですが、本作を読むことで、嘘がどうして良くないとされているのかを深く考えるきっかけになります。
本作を通して嘘はついても別に平気だと感じる場合もあるでしょうし、絶対に嘘はダメだと感じる場合もあるでしょう。
大切なのは嘘をつく事に対して自分なりの考えを持つことです。物事に対して自分なりの考えを持てることは、今後成長していく中で非常に大切なスキルの1つになります。
目的・ねらい2
誰しも経験したことのある気持ちだからこそ共感できます。
語弊があるかもしれませんが、嘘をつかない子はいません。保身のため、友だちのためなどに嘘をつくことは誰でもあることです。
そして嘘をついた時の後ろめたい気持ちも同時に感じているはずです。その後ろめたさを本作では「ちくちく」「どきどき」といった言葉で表現しています。
誰しもが感じたことがある「ちくちく」「どきどき」だからこそ、登場するキャラクターに共感することができ、共感する事を通じて相手の気持ちを想像する力も身についていくことが予想されます。
チェックポイント
現場で毎日読み聞かせを行う現役保育士が、実際に何度も読み聞かせをしたことで分かった大切なポイントを見ていきましょう。
年齢 | 幼児期、特に4歳児 |
季節 | 一年中、若しくは秋頃 |
行事 | 関係なく楽しめる |
対象年齢
4歳児以降がおすすめです。
嘘をつく行為自体は乳児期にも見られますが、嘘について考えたり、善悪の判断をするといった事は難しく思考力が十分に備わってからできるようになります。
考える力や道徳観などが身に付き始める幼児期、特に4,5歳児頃を目安に読むことをおすすめします。
時期・季節・行事
物事の善悪の判断が少しずつできるようになってきた時期がおすすめです。
嘘に限らず日頃の生活の中で様々な事に対して善悪の判断が少しずつできるようになった頃に読むことで、嘘に対して自分なりの考えを持つ事も十分に出来るようになっているでしょう。
子どもの様子を見て、保身のために嘘をついてしまった時などにさりげなく読むのもおすすめです。
嘘について考える絵本なので季節や行事感はありませんが、落ち葉や葉っぱの色づきなどを見ると秋らしい雰囲気が感じられるので、季節感を大事にしたい方は秋に読むのもいいでしょう。
読み聞かせのポイント
- 感情や思いを理解して読みましょう
- 読み手の価値観を押し付けるのは避けましょう
ポイント1
小さな心の動きを声で表現することを意識する!
「あのね」の中ではチッチやトービーの不安や焦り、後ろめたい気持ち、申し訳なさなどが絵や文から感じ取れる場面が多々あります。
そのどれもが些細なものであり、大げさに表現すると作品の持つ雰囲気を壊してしまう可能性もあります。
些細な気持ちや心の変化を表現するのは難しいことではありますが、読み手は読み聞かせをする前に本作をよく読みチッチとトービーの気持ちを理解した上で読み聞かせをすると、聞き手に二匹の気持ちの変化を伝える事ができるでしょう。
ポイント2
嘘を否定、禁止する絵本ではありません。
嘘をテーマに描かれている絵本ではありますが「嘘は絶対についてはいけない!」というメッセージは込められていません。あくまで嘘をついてしまった時の子どもの気持ちに寄り添っている絵本だと私は思います。
「嘘をつくってどういうことなんだろう」と考えることが本作のねらいや目的なので、読み手の価値観や教訓の一環として「嘘ってだめだよね」などと読んでいる最中や読み終えた後に伝えるのは避けましょう。
まとめ・Ryuの感想
嘘をついた時の気持ちが繊細に描かれている深い一冊です。
嘘をテーマにした時にどうしても嘘をついた人にバチが当たるという展開になり、「嘘をついたらダメなんだ」というメッセージが込められてしまいがちですが、「あのね」の中では嘘を一切否定していません。
嘘がいけない事と伝える事も大切だとは思いますが、まずは嘘をついた時の子どもの気持ちに寄り添って、「嘘をつくとこういう気持ちになるんだ」と子どもが感じる方が大切だと思っています。
本作では「ちくちく」「どきどき」といった易しい言葉を使い子どもでも分かりやすく、子どもの気持ちに寄り添っている点が本当に素晴らしいと感じます。
押しつけがましく「嘘はいけない」と伝えるよりも、嘘について子どもが自身が考えた時に「嘘はついた方もつかれた方も嫌な気持ちになる」という事に気付くことが出来たら自然と嘘はつかなくなるでしょう。
そんな嘘について考えるきっかけをくれる素敵な一冊です。
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