【七夕にまつわる幸せで切ない物語】きつねのたなばたさま【現役保育士がレビュー】

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【5歳児以上におすすめ絵本】きつねのたなばたさま【ねらい・読み聞かせのポイント教えます】

Ryu

「きつねのたなばたさま」は私が”登場するキャラクターの心情を想像する経験をして欲しい””困難を乗り越えた先には幸せが待っている事を感じて欲しい”というねらい・想いを持って読むことが多い一冊です。
保育士歴10年以上のRyuが日本一詳しいレビューをお届けします。

「きつねのたなばたさま」を通じて目指す子どもの姿
  • 感情移入を通して、相手の気持ちを想像しようとする
  • 辛い事があっても乗り越えようとする
  • ストーリーに対して自分なりの思いや感想を持つ

目次

作品紹介 

正岡 慧子
松永 禎郎
出版社世界文化社
発行日2003/6
値段¥880
ページ数/大きさ32P/A4変

「きつねのたなばたさま」はこんな絵本!

「きつねのたなばたさま」ってどんな内容の絵本?

 そんな疑問にお答えするために「きつねのたなばたさま」を簡単にまとめてみました。

  1. 子狐が自立するまでを描いた切なくも温かいストーリー
  2. 濃厚なストーリーを主軸とし、そこに七夕の要素を掛け合わせた七夕に読みたい作品
  3. 登場するキャラクターの心情を想像する経験ができる

まるわかりQ&A

「きつねのたなばたさま」を一言で表すと?

心の動きがしっかりと描かれている七夕に読みたい切ない絵本!

子どもの反応は?

静かに聴き、それぞれが違う事を感じている!

ずばり何歳向け?

5歳児以上!

どんな人は買い?

織姫・彦星が登場しない七夕に関連する長めのストーリーを探している人!

あらすじ・ストーリー・内容

切なくも心温まるきつねと七夕のお話し。

 子狐はお母さんが空に上って行き、とうとう雲の中に消えてしまう夢を何度も見ます。食べ物を探しに行ったまま帰ってこないお母さんの夢。でも、子狐はお母さんが猟師に撃たれた事を知りません。

 お母さんの夢を見ると決まって山を下りていつも男の子とそのお母さんが一緒に遊んでいる農家に行きます。お母さんと一緒だった事を思い出せるのです。今日は男の子とお母さんは庭に笹を飾り「お父さんの病気が治りますように」という短冊を飾っていました。

 人影がなくなると子狐は笹のそばに行き「これがお願い事だな」と確認すると、山に戻りどのようにしたらお願いが分かってもらえるのかを考えました。そして、山芋の葉に足跡を残す事を思いつきました。夜に山芋の葉を笹に括り付けると「お願いします」と小さな声で呟きます。

 幾日か経ち農家の様子を見ると男の子とお父さんの姿が見えました。そう、男の子の願いは叶ったのです。願いが叶わなかった子狐は「やっぱり字を書かなくちゃダメだったんだ」と落ち込み、夢でお母さんに会えるからと寝てばかり。そしてどんどん痩せていきます。

とうとう立つ元気もなくなってきた頃、向こうの方にお母さんのようなキツネが見えました。しかし、それはお母さんではなく可愛い雌のキツネ。メスのキツネは子狐に食べ物を持ってきてくれました。

 季節は廻り、今では子狐はお父さん。子どもにも囲まれてとても幸せに暮らしています。しかし、短冊に込めた願いをずっと忘れた事はありません。

 親子の絆、生きる事の喜び、成長と逞しさ、切なさ…心が動くストーリーが魅力的です。

こんな方におすすめ

以下の項目に当てはまる方に「きつねのたなばたさま」はぴったりの絵本です!購入を検討してみましょう。

  1. 七夕伝説とは違う視点で描かれた七夕に関する絵本を探している
  2. 長めの読み応えのある落ち着いた雰囲気の絵本を探している

絵本比較!あなたに合った絵本を探そう!

「きつねのたなばたさま」は探している絵本とは違った…。そんなあなたにはこちらをおすすめ!

七夕伝説が優しいタッチで描かれた「たなばたさま」

 七夕の夜に何故、織姫と彦星が会う事ができるのか、どうして一年に一度しか会えなくなってしまったのかが分かりやすく描かれています。好きな事ばかりをしていてはいけない事もあるという教訓的な側面も描かれています。

 七夕の由来にしっかりと触れたい時に読みたい一冊です。

戦争について知り、考えるきっかけになる

 戦時中に上野動物園にいた象たちの悲しい結末を描いたストーリー。戦争の悲しさ、人間の非情さなどがしっかりと描かれており、戦争や人間の在り方について考えさせられる読み応えのある作品です。

 5歳児以上に読みたい長めのストーリーを探している時におすすめの一冊。

目的・ねらい

絵本はそれぞれ作者の願いや思いが込められています。その思いを汲み取り、絵本を読むときに目的やねらいを持つ事をおすすめします。以下の「目的・ねらい」はRyuが読み聞かせをするときに大切にしている事です。参考にしてみてください。

  1. 登場するキャラクターの気持ちを想像したり、感情移入しようとする
  2. 困難や悲しみの次には幸せな事もあることを感じる

目的・ねらい1 

気持ちを考え・想像するのにぴったりな構成です。

 「きつねのたなばたさま」は、嬉しい、悲しいといった文字表現がないため、ストーリーを楽しむ中で登場するキャラクターの気持ちを「今はこんなことを考えているのかな」と想像する必要があります。

 気持ちを読み取る事は難しく集中力も必要とされる行為ですが、ストーリーやキャラクターの行動も相まって気持ちが読み取り易くなっています。

 読み取る事でストーリーの理解やキャラクターの行動に対する理解も深まり、楽しさも広がります。そして、相手の気持ちを読み取る行為は人間同士での関わり、日頃の生活の中でも必ず役に立つものとなります。

目的・ねらい2  

辛いことばかりではない。そんなことが感じられる展開です。

 主人公である子狐は母親が亡くなっていることも知らず一匹で生き、そんな母親に会える事を願い短冊にお願い事を込める描写や、結局会う事が出来ずどんどんやせ細っていく場面など、子狐にとって余りにも辛い日々が描かれています。

 しかし、最後にはメスのキツネが手を差し伸べ、そして家族を作ります。母親の事は最後まで忘れる事はなく、悲しみは背負いつつも最後は幸せを掴むことが出来るという展開に困難を乗り越えた先の幸せを感じざるを得ません。

 子どもにとってその幸せを感じるのは難しい事かもしれません。ですが、辛い事ばかりではない事を感じ、今後の人生の中でも「きつねのたなばたさま」を読んで感じた事を思い出すことがあるでしょう。

チェックポイント

現場で毎日読み聞かせを行う現役保育士が、実際に何度も読み聞かせをしたことで分かった大切なポイントを見ていきましょう。

年齢幼児期、特に5歳児以上
季節
行事七夕

対象年齢

5歳児以降におすすめです。

 文字数が多い事や登場するキャラクターの心情を理解する事で内容の理解が深まる作品なので、3,4歳児であっても少し難しい内容となっています。

 5歳児以降になると最後まで集中して見る事ができたり、心情を理解できるようになってくることが予想されます。仮に5歳児に読んで少し難しい様子が見られたら、小学校に進学後でも十分楽しむ事ができる作品です。

時期・季節・行事

相手の気持ちに理解を示そうとする姿が見られた時期がおすすめです。

 「きつねのたなばたさま」は主人公である子狐の気持ちを理解する事で、子狐の行動理由が見えてきて面白さが深まります。自分だけでなく他者の気持ちを理解しようとする姿が見られないと、子狐の心の動きが読み取りづらく作品の深みが感じにくくなってしまう可能性があります。

 しっかりとしたストーリーが楽しめる本作ではありますが、そこに笹や短冊、願い事といった七夕の様子が絡められているので季節は夏、行事は七夕に合わせて読むことで、七夕に関する作品として聞き手の心に残るでしょう。

読み聞かせのポイント

「きつねのたなばたさま」を読み聞かせをする中で意識しているポイントです。読み方を少し意識するだけで内容がぐっと伝わりやすくなります。読み聞かせをする中で自分なりのポイントも探してみるのも面白いですよ。

  1. あまり抑揚をつけずに読みましょう
  2. 聞き手の様子をよく見て読みましょう

ポイント1  

落ち着いた雰囲気で楽しみたい作品です。

 「きつねのたなばたさま」は驚くような展開はありませんし、決して盛り上がりを楽しむような作品ではありません。子狐の言葉も書かれていますが、意識して声を使い分ける必要もないでしょう。

 抑揚をつけずに読んだり、声を使い分けずあえて淡々と読むことで落ち着いた雰囲気を作れるだけでなく、読み手が登場するキャラクターの気持ちを考えようとする機会を与える事ができます。

 読み手が感情移入できるように自分なりの読み方や目の前の子どもに合った読み方を模索するのも面白いですよ。

ポイント2

集中力が持続しているかは顔を見れば分かります!

 本作は文が長く読むのにも10分弱かかります。普段から絵本に触れていない子は最後まで集中力を保って聞くことが難しいでしょう。

 なので、読んでいる時には余裕があったらでいいので聞き手の表情も確認しながら読むことをおすすめします。子どもは集中しているかそうでないかが顕著に表れます。

 もし、集中が切れているようだったら少し時間を空けて読んだり、翌日の楽しみにとっておくなど2部制のようにするのも読み方の1つです。

まとめ・Ryuの感想

七夕は織姫と彦星だけじゃない!違った視点で七夕を楽しめる作品。

 少し長めのストーリーなので、読む場面や読む年齢を選びますが、個人的にとても大好きな作品の1つです。

 子どもにはまだ少し難しいかもしれませんが、困難からの自立、悲しみと幸せ、周りの支えなど様々なメッセージが込められていて大人になるとついウルっとしてしまう内容となっています。勿論、子どもにも読んで欲しい作品で、本作から子どもも何かを感じ取り、心の栄養になっている事は間違いありません。

 実際に読み聞かせをしている時は、多くの子がじっと聞いていたり、中には感情移入して「かわいそう」と声を出しながら聞く子もいました。5歳児もしっかりと登場するキャラクターの感情を読み取り、聞いている事が分かります。

 織姫と彦星が出ないので、いわゆる王道の七夕絵本ではないかもしれません。しかし、ストーリーやメッセージ性が素晴らしく、個人的に名作と思っている作品の1つです。

Ryu

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