【5歳児おすすめ絵本】かわいそうなぞう【ねらい・読み聞かせのポイント教えます】
「かわいそうなぞう」は私が”自分の考えと向き合う経験をして欲しい””戦争を知る・考えるきっかけになって欲しい”というねらい・想いを持って読むことが多い一冊です。
保育士歴10年以上のRyuが日本一詳しいレビューをお届けします。
作品紹介
作 | 土屋由岐雄 |
絵 | 武部本一郎 |
出版社 | 金の星社 |
発行日 | 1970/8 |
値段 | ¥ | 1210
大きさ・ページ数 | 26.5×18.2cm/32p |
「かわいそうなぞう」はこんな絵本!
「かわいそうなぞう」ってどんな内容の絵本?
そんな疑問にお答えするために「かわいそうなぞう」を簡単にまとめてみました。
- 発行部数220万部を超えるミリオンセラー&ロングセラー作品
- 戦争の悲惨さが感じられる実話を基にした創作作品
- 自分の考えや思いに向き合うきっかけになる
まるわかりQ&A
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あらすじ・ストーリー・内容
上野動物園であった悲しい象の物語。
桜舞い散る日、賑やかな上野動物園にひっそりとある死んだ動物を祀ってあるお墓があります。そこに祀ってある戦時中にいた象の名前は、ジョン、トンキー、ワンリー。
戦争中であったためもし爆弾が落ち、檻が壊れ動物たちが脱走して暴れてしまったら大変だということで、動物たちは次々と殺処分されていきます。
食べ物に毒を盛ったり、毒を注射しようと試みますが、象が利口であることや皮膚が固くどれも効きませんでした。なので、餌を与えずに餓死させることに決めたのです。
日に日にやせ細っていく象たち。飼育員の人も涙を流しながらその姿を見守ります。飼育員が耐えられず餌を持っていきましたが、時すでに遅し。3頭とも死んでしまいました。
「戦争をやめろ」飼育員はそう叫び続けました。
象への悲しみを感じると共に、戦争・人間の無情さが描かれた作品です。
※実話を基にした創作絵本です。
こんな方におすすめ
- 戦争に関連する絵本を探している
- 自分なりの考えや解釈を持つことが出来る絵本を探している
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愛するとは何かを考えさせられる「100万回生きたねこ」
100万回も死なない猫の深いお話し。100万回死んで、100万回生きた猫がいました。ある時は王様の猫、ある時は船乗り、またある時はサーカスの猫でした。ある日、白猫に出会います。その白猫と子どもを授かり、過ごしていく中で愛を知ります。
自分の思いに向き合える名作です。
善悪とは何かを考えさせられる「すてきな三にんぐみ」
お金持ちから泥棒をする所謂”悪者”。ですが、ある女の子との出会いをきっかけに三人の気持ちが変化し、恵まれない子たちを助ける素敵な三人組になっていきます。
自分なりの考えが持てるようになった時に深みが増す一冊です。
目的・ねらい
- 絵本を通して自分の考えと向き合い、感想を持つ
- 戦争とはどのようなものかを知る
目的・ねらい1
考え方・感じ方は人それぞれ!
「かわいそうなぞう」を読んで、大人がパッと思いつくのが象に感情移入をして「象が可哀想」というのが多いかと思います。
しかし、それはあくまで大人の考えであり、子どもはまた別の角度から物事を見ている可能性もあります。
「人間が酷い」「他の人を守るためには仕方がなかった」「戦争はダメ」などなど、子ども一人一人が違う考えを持つでしょう。
大切なのは自分なりの考えや感想を持ち、それらと向き合うことであり、それが「かわいそうなぞう」を読む大きな目的の1つになります。
目的・ねらい2
歴史を知る第一歩!
「かわいそうなぞう」の大きなテーマとして戦争があります。子どもたちにとって戦争はまだあまり関係のないものではありますが、成長したら必ず学ぶものでもあります。
その戦争、言わば歴史を知る・興味を持つことの第一歩として、本作を読むのもいいでしょう。
作中に戦争に対する細かい描写などはありませんが、「戦争っていうものがあったんだ」「戦争って何をするんだろう」という思いを持つことが出来たら、それで十分です。
チェックポイント
現場で毎日読み聞かせを行う現役保育士が、実際に何度も読み聞かせをしたことで分かった大切なポイントを見ていきましょう。
年齢 | 5歳児、若しくは5歳児以上 |
季節 | 一年中、若しくは夏 |
行事 | 終戦記念日やお盆など |
対象年齢
5歳児がおすすめです。
戦争というテーマ、ページ数、文字数などを考えると5歳児がいいでしょう。
象に感情移入する、自分の考えと向き合うという高度な行為も目的として考えられるので、十分に心や思考力が育った5歳児に読むことをおすすめします。
時期・季節・行事
物事に対して自分なりの感想を持つことが出来るようになった頃。
例えば公園で遊んだ事に対して「楽しかった」だけではなく、「友だちと走ったから楽しかった」と、楽しかった理由まで説明できるようになったり、他の絵本などに対しての自分だけの感想を持てるようになったら、「かわいそうなぞう」を十分に楽しむことができるでしょう。
作中には桜が描かれていますが、季節としてはいつ読んでも問題ありません。終戦記念日に関連づけてである夏に読むのも良いと思います。
読み聞かせのポイント
- 基本は淡々と、言葉の部分は感情を乗せて読みましょう
- 読んだ後に感想を求めないようにしましょう
ポイント1
物語の大部分が回想、ナレーションです。
内容としては過去に起こった事を説明しているような流れになるので、読み方としては感情を入れず淡々と読んだ方が、聞き手に絵本の内容が伝わりやすくなります。
また、少ないものの登場人物が話す言葉もあるので、そこは絵本の流れや状況によって感情を乗せるように読むことで、物語の中に強弱が出て聞き手が飽きずに最後まで集中できるようになるでしょう。
少し長いストーリーになるので、予め全体の流れを把握しておいた方が読みやすくなるので、読み聞かせをする前に一度目を通しておくことをお勧めします。
ポイント2
聞き手の感想を邪魔しない!
目的1にも書いてあるように「かわいそうなぞう」を読む理由の1つとして”自分の思いと向き合う”ことがあります。
これまでの読み手の経験から様々なことを思い、各々が違う考えを持つことでしょう。
その貴重な体験をしようとしている時に、読み手が「どうだった?」「象さん可哀想だったね」などと読み終えた時に言ってしまっては、台無しです。
読み聞かせをして色々と聞きたい気持ちも十分に分かりますが、そこは聞き手の為にぐっと堪えて聞き手が自分の考えと向き合う時間を作りましょう。
まとめ・Ryuの感想
大人にも読んで欲しい、あまりに残酷なお話し。
戦争の影響を動物園の視点から描かれた名作です。戦争の酷さは勿論、私は人間の身勝手さも本作を読み痛感しました。
私は5歳児に対して、終戦記念日が近くなってきた時期に戦争の話を交えて読むようにしています。
子どもには戦争の話はまだ難しいのかもしれませんが、読み終えた後は「戦争って何?」「動物が可哀想だね」「どうして戦争するの?」など、たくさんの感想が自然と出てきました。
少なくとも戦争というものを考えるきっかけを作ることはできます。そして、この記事を書いている2022年3月27日は戦争真っただ中です。
同じ過ちを繰り返してはいけないと改めて思わせてくれる、今だからこそ読みたい一冊です。
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