【取り返しのつかない事もあることが学べる】さるかにがっせん【現役保育士がレビュー】

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【4,5歳児おすすめ絵本】さるかにがっせん【ねらい・読み聞かせのポイント教えます】

Ryu

「さるかにがっせん」は私が”自分だけの事を考えていては良くない事も起こることを感じて欲しい””協力する事で大きな力を生み出す事を知って欲しい”というねらい・想いを持って読むことが多い一冊です。
保育士歴10年以上のRyuが日本一詳しいレビューをお届けします。

「さるかにがっせん」を通じて目指す子どもの姿
  • 自分の事だけしか考えない事を良くないと感じる
  • 協力する事で生まれる力強さを感じる
  • 蟹の気持ちを考えられる

目次

作品紹介 

作・絵いもと ようこ
出版社金の星社
発行日2008/9
値段¥1650
大きさ・ページ数28.6×22.6cm/32P

「さるかにがっせん」はこんな絵本!

「さるかにがっせん」ってどんな内容の絵本?

 そんな疑問にお答えするために「さるかにがっせん」を簡単にまとめてみました。

  1. 日本昔話の1つをいもとようこさんが子どもにも読み易いようにアレンジした作品
  2. 自己中心的な考えの良し悪し、協力の大切さ、善悪の判断などの教訓が詰まっている
  3. 展開が面白いだけでなく、言葉の響きの良さも楽しめる読み易さが魅力的

まるわかりQ&A

「さるかにがっせん」を一言で表すと?

仇討ちについて考えさせられながらもストーリーが楽しめる絵本!

子どもの反応は?

展開を集中して聞き、驚いたり、笑ったり、同情しながら楽しむ!

ずばり何歳向け?

4歳児向け!

どんな人は買い?

因果応報や取り返しのつかない事もあることを感じられる絵本を探している人!

あらすじ・ストーリー・内容

取り返しのつかない事もある。面白い展開の中に学びが詰まった日本昔話です。

 昔々カニがおむすびを拾いました。そこに猿がやってきておむすびと柿の種を交換しようと提案します。カニは拒みますが、柿は育てれば毎年食べられる事を伝えられ、なるほどと思い交換しました。

 カニは柿の種を庭に植えると「はやくめをだせかきのたね ださぬとはさみで ほじくるぞ」などと唄いながら大切に育てました。するとどんどん大きくなり、あっという間に柿の木に沢山の柿の実がなりました。

 しかし、木に上れないカニ。そこに猿がやってきて柿の実を取ってくれるといいます。しかし、猿は柿をバクバク食べ、カニにはあげません。そして固い実をカニに投げつけると、カニは死んでしまいました。

 暫くするとカニから生まれた沢山の子どもたちが「お母さんの仇を取ろう」と決心します。そして、それを聞いた石臼、栗、蜂、牛の糞が仲間に入りました。皆で猿の家に向かいます。

そして猿が帰ってくるのを栗は囲炉裏の中、蜂は天井、カニは水がめの中、牛の糞は戸口の下、石臼は屋根の上に隠れて待ちます。そして猿が家に帰るとそれぞれが隠れていた場所に猿が近づくと攻撃します。

 たまらず外に出た猿の上に石臼が乗っかり猿はぺちゃんこ。猿は涙を流してもう二度としないと涙ながらに謝りました。

 今もなお色あせない読み続けて行きたい名作です。

こんな方におすすめ

以下の項目に当てはまる方に「さるかにがっせん」はぴったりの絵本です!購入を検討してみましょう。

  1. 自分の事ばかり考えていてはいけない事を感じられる絵本を探している
  2. 協力する良さ、善悪の判断などの教訓が感じられる絵本を探している

絵本比較!あなたに合った絵本を探そう!

「さるかにがっせん」は探している絵本とは違った…。そんなあなたにはこちらをおすすめ!

相手の事を考える温かさが描かれた「ぎょうれつのできるパンやさん」

森の奥に出来たパン屋さんの優しさが噂を呼び、少しずつ繁盛、そして最後は行列ができるまでになる温かいストーリー。パン屋さんの目の前の人を笑顔にしたい思いが人や動物を繋いでいく温かさが感じられます。

 相手の事を思いやる大切さや良い行いをした後には良い事が返ってくる事を伝えたい時にはこちらをおすすめ。

皆で力を合わせて物事を作り上げる良さが感じられる「どんぐりむらのどんぐりえん」

 どんぐりえんのお店屋さん祭りをするにあたって色々な葛藤や苦労を超えてお祭りを成功させるストーリー。温かな雰囲気やどんぐりたちのやり取りが魅力的で、落ち着いて楽しめる作品です。

 協力して1つの事を成し遂げる喜びが感じられる絵本を探している時におすすめの一冊。

目的・ねらい

絵本はそれぞれ作者の願いや思いが込められています。その思いを汲み取り、絵本を読むときに目的やねらいを持つ事をおすすめします。以下の「目的・ねらい」はRyuが読み聞かせをするときに大切にしている事です。参考にしてみてください。

  1. 自分の事だけしか考えていない言動に疑問を感じる
  2. キャラクターの気持ちを考え、同情しようとする

目的・ねらい1 

他者の気持ちに気付けるようになるからこそ読みたい一冊です。

 3,4歳児にもなると自分だけでなく他者の気持ちにも少しずつ気付けるようになってきます。自分の気持ちが一番大切なのは大きくなっても変わりませんが、人との関わりの中で次第に自分の事だけでなく相手の事も考えなければいけない事を感じていきます。

 「さるかにがっせん」の猿の様子を見ていると全て自分の事だけを考えての行動が描かれています。心が発達していくにつれて、猿の自己中心的な行動に疑問を感じる事が出来るようになるでしょう。

 また、自分の事だけでなく他者の事を思いやり、協力する場面も対照的に描かれているので他者を思いやる大切さも感じる事ができます。

目的・ねらい2  

キャラクターの気持ちを想像しやすい展開です。

 本作の中ではカニが死んでしまうというショッキングなシーンが描かれています。子どもにとっては中々にキツイ展開ではありますが、そうした描写をあえて入れてあることで感情が動かされたり、キャラクターに感情移入がしやすくなっているように感じます。

 幼児期にもなると相手の気持ちを少しずつ考えられるようになるもの。心が発達している中でカニが死んでしまう描写を見る事で「かわいそう」「猿は嫌なやつ」といったようにカニの気持ちを考えた気持ちが沸き上がってきます。

 あくまで絵本のキャラクターではありますが、絵本に登場するキャラクターの気持ちを考えることは実生活で他者の気持ちを考えるきっかけや練習にもなる大切な行為でもあります。

チェックポイント

現場で毎日読み聞かせを行う現役保育士が、実際に何度も読み聞かせをしたことで分かった大切なポイントを見ていきましょう。

年齢幼児期、特に4歳児
季節一年中
行事発表会など

対象年齢

幼児期後期がおすすめです。

 文字数も少し多めですし、集中力を要するストーリーものということ。また、因果応報や思いやりの大切さ、協力、善悪の判断などの難しいメッセージ性を考えると4,5歳児頃に特に読むのが適しています。

 途中でリズムの良い言葉で気持ちをリセットできたり、最後は畳みかける怒涛の展開があり比較的読み易い作品なので4歳児に読むことを一番おすすめします。

時期・季節・行事

相手の気持ちの存在に気付き始めた頃がおすすめです。

 成長していく中で自分の気持ちに気付き自分の気持ちが中心だったものが友だちや身近な大人との関わりを通じて次第に相手の気持ちに気付いたり、考えようとする姿が見られるようになります。

 そんな時期に「さるかにがっせん」を読むことで相手の気持ちを更に深く考えるきっかけになるでしょう。

 季節や行事に関する描写はありませんが、それぞれのキャラクターが立っていて分かりやすい展開なので、子どもが気に入れば発表会などの題材にするのもおすすめです。

読み聞かせのポイント

「さるかにがっせん」を読み聞かせをする中で意識しているポイントです。読み方を少し意識するだけで内容がぐっと伝わりやすくなります。読み聞かせをする中で自分なりのポイントも探してみるのも面白いですよ。

  1. 喜怒哀楽を表現して読みましょう
  2. 読んだ後に感想を言ったり、聞かないようにしましょう

ポイント1  

展開と共にキャラクターの感情がよく動いていのを意識する!

 カニが柿を育てる場面では喜びや楽しみ、カニが死んでしまう部分は哀しみ、復習する場面は怒りといったように「さるかにがっせん」は喜怒哀楽がテンポよく詰まっている作品となっています。

 キャラクターの表情なども感情に合わせたものになっているので絵だけでも十分感情を判断する事ができますが、ストーリー性のある展開なので声にも感情を乗せる事でより深く作品を楽しめるようになるでしょう。

ポイント2

感じ方に正解はない内容なので、配慮が必要です。

 教訓があるような作品全般に言えることではありますが、人の考えはそれぞれ違っていて読み手の感じ方と聞き手の感じ方が違っている可能性も十分に考えられます。

 特に本作は仇討ち、復習という賛否が分かれる展開なので「猿はやられて当たり前だよね」などといったように読み手の一方的な思いを伝えないよう気を付けることをおすすめします。

 また、「自分だけの事を考えたらだめだよね」「一緒に力を合わせると良い事があるから仲良くしようね」といった読み手が伝えたいメッセージも伝えずに、まずは作品を楽しむことが第一、その中で何かしら感じてくれたらラッキー程度に思って読むといいでしょう。

まとめ・Ryuの感想

教養としても読みたい。大切なことを教えてくれる作品です。

 日本人なら一度は見聞きしたことがあるであろう「さるかにがっせん」。現代は昔話に触れる機会も少なくなっていますが、日本の文化を知る為にも一度は読んでおきたい昔話の1つです。

 カニが死んでしまったり、猿がそこまでやらなくてもと思えるほどやられてしまう展開など少々刺激が強い作品ではあるので子どもの心の状況などを考えてから読みたい作品でもあります。

 読み聞かせをすると「猿っていやだね!」「カニが可哀想」といった感想が多く出てきます。しかし、その中で「猿が可哀想」という意見もあったりと子どもの中でも賛否が分かれる展開である事が感じられます。

 一見重たい雰囲気の作品のように感じられますが、カニが柿を育てる場面での歌や牛の糞が出てくる場面で子どもたちも笑いながら楽しむことができるので、雰囲気も重くなりすぎない点も魅力的です。

 ストーリー性も面白く、展開も分かりやすいので純粋に読み物としても楽しめる絵本となっています。

Ryu

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